November 30, 2003

日本の「村」再考

【日本の「村」再考】--くたばれ近代化農政-- 山下惣一著  現代教養文庫

山下惣一氏の名前を知ったのは10年以上前、東京新聞の「本音のコラム」に執筆している頃のことだった。そのコラムには稲作を中心とした水利権と村社会の仕組み等、都市で生まれた人間にとって興味深い、目からウロコが落ちる話が毎回綴られていた。それまで、僕は農業について何も知らず、まったくの無知で、コラムを読むたびに自分を恥じる思いがした。この本は1936年生まれの氏が20代後半の1975年に刊行した同名の書籍を1992年に文庫本におさめたものである。文庫本の後書きにはこう記されている。

・・・・・この本のサブタイトルは「くたばれ近代化農政」であったが、どうやらくたばったのは、あるいはくたばりかけているのは、村と農民の方だった。この本を書いた直後から農業は国際化の波に飲み込まれ、ほんろうされつづけてきた。多くの百姓が農業を投げ出してしまった。別の言い方をすると農業から追い出されたのである。・・・・・
多くの農家が200万未満の農業収入しかないなかで、近代化に伴う農耕機械導入によって農協への借金返済に追われ、農業以外に現金収入を求めなければならない現実を考えると、この一年あまりに立て続けに起きている農作物の盗難被害は、まったくやりきれない思いにさせられる。

Posted by S.Igarashi at November 30, 2003 05:04 PM
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