VectorWorksで始めるCAD(1999年9月発行)の前書き。
Posted by S.Igarashi at November 6, 2003 11:42 PM | トラックバック
杉の海によみがえる楼閣
1998年11月にNHKで放映された中国貴州省黎平県トンチン村の楼閣再建を取材したテレビ番組「杉の海によみがえる楼閣」は設計とはなにか、しいてはCADの存在意義を考える意味でも大変興味深い内容だった。
250年ぶりに再建される鼓楼と呼ばれる楼閣建築の為に用意された図面は一つもない。建築を一任された村の大工棟梁ウー・ファイジンの脳内では鼓楼は既に完成している。しかしその姿を知るのはウー・ファイジン一人だけである。彼の脳内にある鼓楼を現実世界に再構築するのに使う道具はメイバンと呼ばれる五本の竹の尺杖だけで、それが全ての寸法押さえの原器となり、棟梁の墨付けに従って村の衆一同で刻みと建て方を行い鼓楼を完成させる。鼓楼が竣工した時点で村の衆はようやくウー・ファイジンの脳内にあった鼓楼を知るのである。それでも村の衆がウー・ファイジンに仕事を任せることが出来るのは彼が所属する社会の文化的コンテクストを決して逸脱しないことを知ってるからであり、村人達が共通のコンテクストで結ばれているからである。
一人の人間の脳内に建築が揺るぎない姿で設計されていて、自ら施工まで行えば設計図など必要ないのである。従って当然CADも必要ない。
我々の設計行為は脳による世界のシミュレーションの結果を図面として再構築するものである。CADはその名の通り、その設計行為をコンピュータにより支援するものである。つまりは脳内にシミュレーションモデルがなければCADも機能しない。
CADの操作を習得する前に自分が見ている世界を観察し分析し再構築する能力、建築設計を志すならば建築への理解が最も重要である。でなければ、コンピュータに振り回されCADに使われることに成りかねない。
そうです、あの五十嵐です。
有り難うございます、りりこさんも読者だったのですね。
ダンナさんはとても正しいCADの使い方をしていると思います。
aki's STOCKTAKINGのリンクから来たのですが、うちにMiniCAD5の本が。
あの五十嵐さん・・・ですよね。
おかげで、わたしも家具の配置図作ってぐるぐる回して遊べます。
うちではCADはダンナが舞台の図面を作って見切れチェックや座席からの見え具合などチェックしてます。
彼はものすごーく不器用で、図面引いて仕上げると
現物がちょっと足りない、てなことのある人でしたが
CADが使えるようになってかなり正確な仕事ができるそうです。
ただ、ホール図面にびっちりで作っても、劇場の方がびっちりで仕上がってないことはあるようですが。
あたりまえですけどね。