June 23, 2012

乾燥なめくじ―生ひ立ちの記

何年か前、1970年頃の遙か昔々に新建築の巻頭エッセーで読んだと記憶していた吉阪隆正の「かんそうなめくじ」をキーワードにしてGoogleで検索したけれど、何一つ引っ掛からなかった。確か「かんそうなめくじ」だった筈だが...自分の記憶違いなのか....それ以上追求することもなく忘れていた...。
それが一月ほど前...facebookで『本の網 吉阪隆正蔵書公開』の情報を知り、再度、Googleで検索を掛けたら本書「乾燥なめくじ―生ひ立ちの記」がリストアップされた。書籍は既に絶版となっており、Amazon マーケットプレイスから古本を取り寄せることにした。
何故、読みたいかと思ったのは「かんそうなめくじ」の文明批評的内容が現在の状況を暗示していたと...記憶していたので...それを再確認したかったのである。

パラパラと頁を捲っていると、エネルギー消費と地球温暖化についてこんな一文があった。

....みんながみんなバラバラになって領分を守るだけになった時、一体誰が全体のタクトをふるのだ。どうやってバラバラの世界をそのまま崩壊に導かないようにできるのだろう。いやはや、おれもいつのまにか人間側で論を進めてしまった。おれの立場からすれば、早く人類が亡びてくれればいいんだ。あと五十年持てばいいという説もある。人類がいまのようにエネルギー使用量を倍々とやっていくと百年後には地面の温度が10度上昇するのだと計算した人がある。すると海の中にあるCO2を定着させていたものが、おだぶつになって放出するそうだ。地表はCO2で包まれると太陽熱は吸収蓄積されやすいから、暑い地球になってしまう。魚なら1〜2度の上昇で死んでしまうが、人間だって20度あがればどうなるか。
 だいいち極地の氷がまず溶けだすだろうから、海面がどんどん高くなって、陸地はぐんと小さきなるだろう。平野に住んでいる野郎どもあわてるだろうな。ノアの箱船の用意はできているのかね。すべて宇宙の動きと関係するんだ。....

「かんそうなめくじの弁」(初稿1971年「新建築」1971年8月号掲載)より...

確か...建築が利益追求の目的だけに建設されるようになってしまったことを憂う...文章も読んだような記憶があるが...見つからないなぁ...

Posted by S.Igarashi at June 23, 2012 11:53 AM