内部被曝の真実 (幻冬舎新書)
この新書の腰巻に書かれているように本書は2011年7月27日 (水) 衆議院厚生労働委員会「放射線の健康への影響」参考人説明でのスピーチを完全採録したものである。YouTubeの動画削除もあり、インターネットから衆議院TVにアクセスする手立てを持たない多くの人々にも本書を通じてその内容を知る機会になるだろう。また付録として国会配布資料もあり、既にYouTubeの動画を見た人にも情報価値の高い新書である。
内容
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第一部 7.27 衆議院厚生労働委員会・全発言
1 私は国に満身の怒りを表明します
広島原発の20個以上の放射性物質が撒き散らされた
通達一枚で農家に情報が伝わるわけがない
もっと高性能の測定器があるのになぜ政府はお金を使わないのか
内部被爆からがんはどのように起こるのか
被爆からがん発症まで20〜30年 トロトラスト肝障害の場合
疫学的に証明されるのを待っていたら遅すぎる
母乳からのセシウム検出に愕然とした理由
子どもがわざわざ高線量の地域に通わされている
緊急避難的除染と恒久的除染をはっきり分けるべき
民間のノウハウを結集し、国策としての除染を
2 子どもと妊婦を被爆から守れ-質疑応答
「放射線は健康にいい」は本当か
国が線量について議論しても意味がない
行政が全力で測定し除染するのが、住民の一番の安心
全国の産地で緊急に食物の測定を
1回来て帰るだけの支援では問題をひどくするだけ
放射線取扱者として30年間厳守してきた基準が反故にされている
多量の農産物を簡単に検査する仕組みは今すぐ可能
今私たちが行っている除染活動はすべて違法行為
非難の問題と補償の問題を分けて考えるべき
第二部 疑問と批判に答える
データが足りないときこそ予測が大事
線量を議論しても意味がないのはなぜか
危険を危険だとはっきり言うのが専門家
低線量セシウム被爆の危険性は国際的に認められたものなのか
閾(しきい)値論もホルミシス論もおかしい
セシウムによる長期障害はヨウ素以上に複雑で難しい問題
第三部 チェルノブイリ原発事故から甲状腺がんの発症を学ぶ
エビデンス探索20年の歴史と教訓
第三部の要旨
チェルノブイリ原発事故による健康被害の実態
小児甲状腺がんの増加の原因をめぐる論争
因果関係のエビデンスが得られたのは20年後
エビデンスという名の迷路--増えたのは甲状腺がんだけなのか
極端な症例こそが最も重要な警報
第四部 "チェルノブイリ膀胱炎" 長期のセシウム137低線量被爆の危険性
長期のセシウム137低線量被爆の危険性
第四部の要旨
深刻化するセシウム137の汚染
1940年代以前には地球に存在しなかったセシウム137
前がん状態"チェルノブイリ膀胱炎"の発見
チェルノブイリ住民に匹敵する福島の母乳のセシウム汚染
子どもたちの接触・吸入を防ぐために今すぐ除染を
現行法では低線量・膨大な放射性物質を処理できない
被災者の立証は不可能である---東電・政府の責任
成層圏内の核実験禁止に貢献した猿橋博士の志を継いで
おわりに 私はなぜ国会に行ったか
委員会出席への依頼、そしてためらい
大津波は本当に「想定外」だったのか
専門家とは歴史と世界を知り知恵を授ける人
牛肉からセシウム検出の衝撃---7月9日南相馬にて
稲わら汚染のようなセシウム濃縮は至るところで起こりうる
事故の本質と対策を全知全能を傾けて語る決意
四つの提言---私が伝えたかったこと
人が汚したものを人がきれいにできないわけがない
付録 国会配布資料
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第二部の「危険を危険だとはっきり言うのが専門家」より一つだけ引用すると...
『今までの原子力学会や原子力政策のすべての失敗は、専門家が専門家の矜恃を捨てたことにあります。国民に本当のことを言う前に政治家になってしまった。経済人になってしまった。これらの反省なくしては、われわれの東京大学も再生はありえないし、日本の科学者の再生もありあないと思ってます。』