August 30, 2006

ラジオドラマ・博士の愛した数式

ラジオドラマ・博士の愛した数式を聴いた。
ラジオドラマを聴いたのは久し振りだ、いや、前に聴いたのが、いつの事か思いだせないのだから、久し振りと云うよりも、遥か昔のことである。そうは云っても「君の名は」なんてのは記憶にない。かろうじて「笛吹童子」「紅孔雀」はうっすらと記憶に残っている程度、昭和30年代初めの「赤胴鈴之助」の主題歌は覚えているが、話の内容は忘却の彼方である。と云うことで、久し振りのラジオドラマは中々良いものだ。小説は玉井さんのMyPlaceのエントリーに刺激され直ぐに読んだが、映画は未だ観ていない。リアルタイムで放送されるラジオドラマは時間に拘束されるが、こうしてCD化されたものなら、iPodに入れておけば時と場所を選ばず聴くことができる。iTunes MusicStoreでもこうしたラジオドラマやオーディオブックが増えると良いだろう。

以下、ラジオドラマ「博士の愛した数式」に寄せた、作者・小川洋子の言葉である。

 老数学者と十歳の少年を結びつけるために、この小説には野球が必要だ、と思いついた時すぐさま、彼ら二人が肩を寄せ合い、ラジオにじっと耳を澄ませている情景が浮かんできた。
 静かな食堂に流れる、野球の実況放送。タイガースが得点を入れ、わき上がる歓声。顔を見合わせ、微笑を交わす博士とルート少年。そんなささやかな瞬間に、かけがえのない喜びを見出す家政婦さん……。
 彼らの心が触れ合う場面で、きっとラジオが大事な役割を果たしてくれるに違いないと確信した。ラジオドラマ化のお話をいただき、迷わず了承の返事をしたのは、この小説とラジオが密接な関係にあると、分かっていたからなのだ。
 博士と、家政婦さんと、ルート君の声が聞こえてきた時、懐かしい気持になった。小説を書いている間、ひとときも離れず私の胸にあった登場人物たちの体温が、よみがえってきたからだ。
 自分の書いた一冊の本が、新しい出会いを経て、こうしてまた別の姿に生まれ変わった。「博士の愛した数式」は、本当に幸運な小説である。
 最後に、うれしかったことをもう一つ。私の大好きな八木裕さん、亀山つとむさんと、このような形でご一緒でき、作家としてだけでなく、タイガースファンとして、大きな充実感に包まれている。

阪神の地元は大阪・毎日放送の制作で、同局の野球解説を務める元・阪神の八木裕、亀山つとむが球場の観客役で出演している。阪神vs広島の試合で阪神が先行ということならば、広島のホームゲーム、場所は広島球場ということになるが、博士も私もルートも標準語を話し、登場人物の名前も場所も特定していないが、それはそれで良いのだろう。三人の登場人物の設定もこれ以外考えられない、ルートはやはり10歳の少年でなければいけない。キャスティングもハマっている。そしてラジオドラマは博士の記憶がリセットされる時間と同じ80分で終わる。

Posted by S.Igarashi at August 30, 2006 10:09 AM
コメント

玉井さん、どうもです。
博士が目覚めたときに記憶がリセットされている場面の違和感を博士のモノローグで表現してます。他は家政婦の私が語り部になってます。ルート役の男の子も、10歳の少年の持つ屈託のなさが可愛らしい。
元・阪神の八木裕(現・野球解説者)は全くの素人による棒読みだけど、球場での博士に対し「あんた、へたな解説者より上手いね」と愛嬌で演技をカバーしてる。テレビドラマは見ないけれど、こんなラジオドラマならもっと聴いてみたいと思わせます。
iTMSでも宮部みゆきのラジオドラマ・同心もの時代劇が一話(22分)200円であるから試しに買ってみようかな。

Posted by: iGa at September 1, 2006 10:03 PM

 リンクされているサイトからドラマのさわりをダウンロードしてrealplayerで聞いたら、博士の側からの物語という手をつかったのかと感心しながら、わすれていた物語の細部がよみがえりました。ぼくはギンレイホールで映画も見ました。ひとつの物語をさまざまな方向からさまざな見方で読むということがとても興味深く感じられました。キャスティングも、なるほどこういうのもあるなという感じだし、小川洋子もこの小説もしあわせものですね。
放送時間80分っていうのも、やるなあ という感じですね。

Posted by: 玉井一匡 at September 1, 2006 11:58 AM