November 06, 2005

オリュウノオバ物語

三軒茶屋のシアタートラムで中上健次原作の「オリュウノオバ物語」を観てきた。大学の空間系研究室の学外授業による観劇会である。どちらかと云えば血縁ドロドロの私小説は苦手なので中上健次の文章は雑文程度しか読んでいない。中上健次の作品にふれたのは、昔、ATG(アートシアターギルド)制作の中上健次・原作、長谷川和彦・監督、水谷豊・主演の尊属殺人の実話を元にした「青春の殺人者」を観たぐらいであるから、30年ぶりに中上作品を観たことになる。

空間系研究室の学外授業に中上作品の重いテーマが適しているかは不明だが、プロセニアムアーチのないシアタートラムの演劇空間を学生が体験するという意味では良かったのだろう。舞台は掘込み形式の3尺×6尺束立て床を自由に構成できる利点を生かしてデザインされている。舞台後陣は幕で仕切られ森に見立てられている。その森につながる道が舞台後陣中央から舞台上手に円弧を描いてスロープとなっている。その円弧のスロープによって上手と下手に分割された舞台は、それぞれが三つのレベルのステージを持っている。舞台下手はオリュウノオバの家に見立てられ、客席側から土間、居間、産室に見立てられた段差のあるステージが設けられている。舞台上手は谷地が表現され墓石や石塚が立てられている。そして舞台後方には石積みや堆積物や漂着物が表現されている。物語は和歌山県南部の架空の被差別部落「路地」を舞台に第二次世界大戦を挟み中本の血を巡る「天狗の松」と「天人五衰」の二話を岸田今日子演ずる産婆のオリュウが語り部となり展開する。
路地へ 中上健次の残したフイルム

Posted by S.Igarashi at November 6, 2005 11:20 AM
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