August 31, 2005

貴方好みの女になりたい

MAD Press 1995/4/30
(Mighty Mouseがリリースされたばかりですが10年前の古ネタをだしてみました。)
 私はペンだこをつくったことがない。の、ようなものは小学5年生のとき足に出来た魚目くらいで、八王子の仁和会病院でその魚目を切り取ってもらったことがあった。自分の身体にメスを入れたのはその時が最後でこの年になるまで今のところメスには縁がない。なるべくならば、そのような事はこれからも避けて通りたいものである。
私より一つ年令が下だが、同じ学齢のI氏は構造設計をしているが、彼の右手中指には20年物のペンだこが今や身体と不可分な関係にある。構造設計の大部分をコンピュータでするようになっても、それは変わりない。私は自分では筆圧は強いほうだと思っているが、ペンだこが出来るほど筆記仕事をしていないし、ペンを持ったときの中指に掛かる圧力も強くもない。まぁ軟弱な指先と云ってよい。何しろ、たまに事務所の更新手続きの書類を書いただけで腕がだるくなってしまう程の、体たらくである。いまや、完全にキーボード依存症に成り下がってしまった私であるが、古山氏のようにマウスを握るときに小指を意識したことは一度もない。ペンを持つときでさえも、一度も薬指と小指を意識したことはないように、マウスを握るのに薬指や小指を意識したことはない。古山君のイラストを見ても、別に小指が立っているわけでもなさそうだ。

小指が立つと云えば青山に事務所があったころ、双子の×××を売りにしているOとPが事務所の近辺に越してきたらしく、度々、道で擦れ違うようになった。ある日、地下鉄表参道A4出口から事務所に向かって歩いているとき、映画評論をするOが前を歩いていた。彼の歩く速度と僕の歩く速度を換算すると、大体ヨックモックの前辺りで僕が彼を追い越すことが予測できた。彼に近づくにつれて、彼が全身を緊張させて歩いているのが判った。僕の足音を背中に感じてかOの黒いブーツのピッチが早くなってきた。サントリーのカクテルバーのコマーシャルのように夜中ならば、前を歩いている女性が足早に歩き始めることもあろうが、時は真昼間である、ましてや×××である、この自意識過剰は何と表現すべきか。僕が彼を追い越したとき、彼の節榑立った指先全てが緊張して外に反っているのを見て、映画ミスターレディ、ミスターマダムが現実の描写であったことを知った。女性ならば、見られることの自意識で、綺麗になることも考えられるが、やっぱり、、、、、。

 私の場合はマウスを操作するのに気にする事と云えば、やはりマウスボールの回転と云うか転がり具合と云うか、マウスのすべりが問題である。今まで三種類、五匹のマウスを飼育したことがあるが、一番扱いにくかったのは、四匹目のマレーシア産のLCIIについていたマウスである。とにかくマウスボールも小さく滑りの悪いものであった。さて、古山君が憤慨しているマウスは僕にとって五匹目のマウスである。これは軽いし握った感じも特別悪くない。(重量はADB Mouse IIが110gで、旧式のADB Mouseが150g、そしてMacPlusまでのMouseが約150g位である。)クリックは人差指でも中指のどちらを使ってでもワンボタンで済むし、その点はマックらしいマウスではないかと思う。このマウスを使ってからIIfxのマウスを握ると、角型デザインのせいか、妙に内側にえぐれているように思えて仕方がない。
 思うに、フロッグ・デザインによるADB Mouseに較べてADB Mouse IIが不評なのは、使い勝手の問題よりも、そのデザインの凡庸さにあるのではないかと思う。

 箸の握り方やペンの持ち方の様に、正しいマウスの握り方と云うのはどう云うものだろうか、古山君のイラストを見ても、僕がマウスの握った時の指のポジションと違いがある。マウスボタンに掛かる人差指の位置が全く異なる。多分、永い間使ったマウスは万年筆のように持ち主の癖を記憶しているのかもしれない。ADB Mouseのエンボス加工の消え具合を見れば、誰が使ったものか特定出来るかも知れない。そのうち、土曜サスペンスとかで事件をとく鍵がMouseなんてことも。

 キーボードにしろマウスにしろ人間工学的に完成されたものは無いと言っても、言い過ぎにはならないと思われる。どうも、我々はその人間工学的に未完成のものに先に慣れてしまい、先入観を与えられ正しい判断が出来ない状況にあるのではないだろうか。また、もっと疑い深く見れば人間工学的デザインにも眉に唾を付けたくなる。果たしてそれ程、人間の行動を分析して得られたものだろうか、予断の介入は皆無なのだろうか。アジャスタブル・キーボードもアイデアだけが先行して、肝心のキータッチがあれでは困る。

 それに、人間が直接手に振れる道具にしては小学生も中年のおぢさんもコギャルもオバサンもみんな一緒のマウスにキーボードと云うのも変だ。グラフィック・ユーザー・インターフェースだけがマン・マシン・インターフェースでないのに、ハードウェアが疎かにされ過ぎている。

 昔は背広も靴も誂えるのが普通だった。しかし今やそれは一般大衆には叶わぬことである。住宅も然りである。そうした状況で皆が何となく居心地の悪い思いをしながらも、流されて行くのが現実となっている。

「貴方好みの貴方好みの女になりたい」と奥村チヨが唄うとき、それが逆説的戦略だと云うことに気付かなければならない。マインド・コントロールされているのは貴方なのかも知れないのだから。

Posted by S.Igarashi at August 31, 2005 10:15 AM
コメント

またまた、コメントして失礼いたします。
(最近、文字数が多くて、読みごたえが有りますね〜)

どうも、MacのマウスがUSBになってから、マウスが私の手には合いません。
大き過ぎます。
あの、全体(皮?)がボタンになっているので、手からはみ出すわ、不用意に押してしまうわ(ToT)

…で愛用しているのが、初代iMacのあの、丸いマウス。
人間工学を無視した造りと、評判がとっても悪いのですが、
私には、一番フィットします。
角マウスも良いのですが、やっぱり、ちと大きい。

と言う訳で、Yahoo!オークションでスペア用に、評判の悪いマウスを、今日も入手するのでした…。
私好みのマウスを造って欲しいなぁ〜。

Posted by: 林檎家 at August 31, 2005 05:53 PM