1966年から1968年までバークレー音楽院に留学していた佐藤允彦の帰国第一作アルバムである。そして1969年のスイングジャーナル主催 第3回 ジャズ・ディスク大賞・日本ジャズ賞を受賞した。メンバーはピアノの佐藤允彦に、ドラムが富樫雅彦、ベースが佐藤より一年早くバークレー音楽院に留学していた荒川康男の三人によるピアノトリオである。そして富樫雅彦のフットワークが聴ける貴重なアルバムでもある。
戦後の日本のジャズは進駐軍キャンプの慰問と云うカタチで始まっている。演奏するのはジャズのスタンダードナンバー、雪村いずみがダイナ・ワシントンのコピーだったように、所詮はアメリカのジャズの紛い物といった評価が大勢を占めていた。そうした日本のジャズシーンに変化の兆しが現れたのが1960年代後半からではないだろうか、それはスタンダードナンバーのコピーではなくオリジナルナンバーの演奏によって成し得たことである。「パラジウム」はピアノトリオによるインプロビゼーションの新しいカタチを創造し始めた三人の記録でもある。オープニングとクロージングは佐藤允彦のプリペアドピアノに荒川康男のアルコ奏法、富樫雅彦のベル、と現代音楽的アプローチを見せている。
Posted by S.Igarashi at August 7, 2005 10:23 AM