放浪する雄ライオンをノマドと呼ぶらしい、そのノマドがライオンの群れに遭遇し、群れを率いる雄ラインに勝ち、その群れを乗っ取ると、先ず最初に行うことは乳飲み子のライオン(以前のリーダーの子供)を殺すことである。それは乳飲み子のいる雌ライオンでは受胎しないので、雌ライオンを受胎可能にするための行為である。この話しをテレビで見ていて、30年以上前に我が家の猫に降り掛かった災難を思い出し、成程と合点した。
それは、我が家の二代目の飼い猫(雑種)が小猫を生んだときのことである。その小猫の父親の猫は遠くから通ってきたペルシャ猫の掛かった雑種であった。小猫は父親の遺伝子を引き継ぎ、愛らしい毛並みをしていた。しかし、その雑種のペルシャ猫の恋敵であった近所のシャム猫は面白かろう筈はない。未練がましく、ストーカーの様に家の周りをうろついていた。そして、家の者が目を離した隙に家に侵入、逆恨み宜しく小猫二匹を噛み殺してしまった。獣医さんの話ではシャム猫は野生の本能が強く、時に凶暴になるということだった。つまり、そのシャム猫は自己の遺伝子を残す為に雌を求めて放浪する雄ライオンに近いのだろう。
その一件の後、避妊手術を受けて、我が家に帰ってきた猫は、子供に戻ったように情緒不安定に成ってしまった。ちょっと美形で狂女な猫となったが、あまり長生きはしなかった。その後、我が家では猫は飼ってない。