軽井沢の主役は森であろう。古代より日本人は森から出て生活を始め文明を築いてきた。森は畏敬の念を覚えるものであり、信仰の対象であり、修験者の修業の場でもあった。人里近くの里山は薪炭林としてリサイクル可能な循環型の生活を支える場でもあった。軽井沢の森を避暑地としたのが英国人であったように、森の中で生活することは明治の日本人には考え及ばぬことであったであろう。
それは現代人も同様で、軽井沢を訪れる人々の最大関心事は消費生活であり、目的は旧軽井沢のショッピングモールや軽井沢駅前のショッピングモールであり、森の中に立ち入ることはしないようである。
週末、旧軽井沢の女子美の軽井沢寮を訪れた。軽井沢寮の設計は僕が務めていた高木滋生建築設計事務所によるもので、僕が退職した翌年の作品である。自然から森の一部を借りて自生する木々の邪魔にならないように建てられている。高木さんは脇田邸を設計した吉村順三先生の教え子であり、師から多くの薫陶を受けている。
自生の藤蔓が光を求め地を這い樹木に絡み空に向かう。
Posted by S.Igarashi at August 2, 2004 09:21 AM | トラックバック