November 24, 2003

僕はどうやってバカになったか

先日、八王子のヨドバシカメラに行ったついでに駅前のスクエアビルにある三省堂書店に立ち寄った。建築系、PC系の売り場を覗いてから、社会科学系の売り場を通り過ぎる時、一冊の本が目に付いた。手にすると小説である。何故この売り場なのかと出版社名を見ると青土社だ。なんとなく納得して、元に戻した。歩き出し二三歩過ぎてから立ち止まり、買うことに決めた。本が読んで欲しいと叫んでいるように思えた。
【僕はどうやってバカになったか】マルタン・パージュ作、大野朗子訳
青土社刊  ISBN4-7917-6073-5

いわゆる最近流行の「自分以外みんなバカ系」の本ではない。フランスの新進作家マルタン・パージュが描いた21世紀の寓話である。プロローグの一文から小説に引き込まれていく。

アントワーヌには、あまり友だちがいなかった。ひじょうに寛容で物分かりがよすぎたことから社会に適応できず、辛い思いをしていたのである。彼の趣味は何物をも排除せず、雑多だったので、嫌いなものを共有することで成り立つ派閥から閉め出されていた

主人公のアントワーヌが社会参加を阻む障害を取り除くために選んだ解決法。
1、アル中になろうとしたが体質が合わずに断念。
2、自殺の決意、非営利団体の自殺講座を受講、講義の後に断念。
3、精神安定剤と抗鬱剤の服用
そして、アントワーヌが「ウーロザック」を飲んで知性を捨て去り、バカになるためにしたこと。
1、大学の非常勤講師を辞職する。
2、マクドナルドに行く。
3、理髪店に行く。
4、ナイキ、リーヴァイス、アディダスを買う。デパートにも行き上着も買う。
5、ゲームセンターに行く。
6、ジムに行く。
7、浪費癖がたたり銀行残高がなくなる。
8、職業安定所に行く。学位と学歴が役に立たないことを知る。
9、高校の同級生を頼り就職する。
10、金融トレーダーになりヤングエグゼクティブになる。
11、・・・・・・・・・
これは以外なエピローグの為の序章でもある。
翻訳の妙もあるのだろう、テンポよく爽快に読むことができた。
読み終えて、映像化したら、とても面白い作品になるだろうと考えた。その各シーンを想像するだけでも二重に楽しめる小説だ。

主人公・アントワーヌは意を決してバカになったが、僕は何の努力もせずにバカになっていた。
思い起こせば、小学生になり義務教育とやらを受け始めてから、バカの坂を転がり落ちるようにバカになっていった。小学生になる前の方が僕は幾らか分別が有ったように思える。両親が僕を幼稚園に入園させようとしたとき、僕は幼稚園がどんなところかリサーチした。先ずは、その幼稚園に出かけ金網越しに園児の様子を見学した。大人は嘘をつくことが分かってるから、次にその幼稚園に通っている近所の同い年の子を尋ね、幼稚園で何をするのか教えてもらった。それで僕の出した結論は幼稚園に行かないことだった。両親の「幼稚園に行けば何でも買ってあげる。」という誘惑に挫けそうになったけれど、僕は自分の意志を通した。僕の人生の中でこの時期が一番聡明だった。

Posted by S.Igarashi at November 24, 2003 12:28 AM | トラックバック
コメント