October 01, 2003

MADParty 黎明期

まだ、MADPartyを始める前のテキストがハードディスクの片隅からでてきた。ファイルのデータを見ると作成日が1990/2/24、変更日が1990/3/14となっているから、13年前、一昔も前の文章である。MADPartyを立ち上げる魁となった、MiniCADの自主的な勉強会を浜松の榑林くんの事務所で開催したときに配付した資料につかったものである。従って、設計事務所の実情は1990年当時のことである。
その後、このテキストは過激なトーンを押さえ、企業名を削除して、リース制度の減価償却額の表を加えて「Macintosh Desktop Architecture Guide」に「ユーザー不在のリース契約」として掲載した。
1990年代も後半になってようやく国税庁も重い腰を上げ、コンピュータ等情報機器に対する減価償却対象額の切り上げ等を行うようになったが、まだまだ現実と乖離しているとしか思えない。

くたばれ○○商○!! 1990/2/24 設計事務所にコンピューターが導入されたのは何時頃からだろうか考えてみると、まだ10年位前までは構造事務所でもパーソナルコンピューターは使われていなかったのではないかと思う。電電公社の大型電算機に繋げられた端末機を使っていた構造事務所が多いように記憶している。それでも使用料が高いしプログラムに融通性がないからと言って手計算が半分位だったのではないか。その中のいくつかの構造事務所が独自にプログラムを作るようになったのではないか。6、7年前のパソコン雑誌を見ると構造計算専用のパソコンでも大容量64KBなんて書いてある。と ここまではコピューターに対して純粋な動機と言うものが有った筈である。それは技術的な計算、解析、分析や、所謂、情報処理と言う目的で必要とする者が必要に応じて電子計算機を用いていた。 コンピューターが不純な動機で作られ売られる様になったのはいつごろのことからだろうか。それはメインフレームに乗り遅れた○○電気と、利狂人といい勝負のマッチポンプ体質のPC系出版社、何だか得体のしれないヤクザな○○商会、他人の褌で相撲をとる○○信販、それに虚構をアジテートする大N○K達の詐欺師的な企みが有ったのではないだろうか。

需要を掘り起こすマーケッティング戦略と言えば聞こえがよいが、要は必要としないものに幻想を与え役に立たないものを売り付ける。ユーザー不在の売り手の論理である。それは建築や土地の不動産までを消耗品としてしまい、スクラップアンドビルドが経済発展に不可欠であるとする我が国資本主義経済と見事にシンクロしている。泣きを見るのは無知なもの弱者である。
メインフレームに乗り遅れた○○電気が子飼いの○○商会等を使って、メインフレームやミニコンがハードだけの販売でなくカスタマイズされたソフトを含めたシステムの販売であり、デバック等のメンテナンスに販売価格の20%を保守契約費として一年間に要するという事実に蓋をして、右も左も解からない零細企業や工務店、商店のおっちゃんに言葉巧みにパソコンで即戦力、全てがうまくゆくと売りまくった。人件費が節約でき、人の2倍3倍の処理能力があると聞いて、昨日までドンブリ勘定だった、おっちゃんが早速ハードと経理部長とやらのソフトを購入して、いそいそとパソコン講習会に出席したものの、商業簿記を知らないこのおっちゃん貸方借方の区別も解からず、自分の娘くらいの年令のインストラクターに軽蔑の視線を受け、もうパソコンはいややと、さっきのインストラクターのボディコンの姉ちゃんのお尻の形を思い浮かべ、いささかマゾヒスティックな気分に浸り自棄酒を煽り向こう5年間のリース料を考えると、憂鬱な気分になるのである。 リース契約等というものは、信販会社と国税局の為にある制度であり、ここに於いてもユーザー不在の一方的な契約条件を押しつける売る為の論理しか存在しない。多くの消費者はリース契約に対して無知でありリース期間が終わればその商品が自分のものになると信じている。また多くのセールスマンがそう言って消費者を欺いてきた。契約書を読めば解かることであるが、消費者側からの契約解除は出来ない様になっている。もし契約解除する場合は残金の全てと商品を信販会社に返却しなければいけないことになっている。結局、金も取られて商品も何も残らないことになる。税法により10万円以上の備品等は原価償却の対象となり、定率法に拠る6年の償却期間が終わっても1/10の残存価格が資産として残り、経費として損金扱いには出来ない。結局ここに目を付けたのがリース制度である。リース契約が終わるとどうなるかと言えば、商品は信販会社の物であるから当然返却しなければならない。信販会社は返却された商品をそのまましていては1/10の価格を償却出来ないので破棄処分にして損金扱いにする。破棄処分を免れた物が闇ルートを通じてジャンクショップや東南アジアへ流れたりするのである。数箇月で契約解除された新品同様の商品等はメーカーの商品倉庫でコンパウンドで磨れカウンターを元に戻して真空包装を施され市場へと復帰するのである。再リース契約を消費者が希望する場合は年間リース料の1/10で一年毎に再契約するか、1/10の残存価格で買い取るか何れかを選択しなければならない。これには新商品を売り付けようとするセールスマンの様々な誘惑に打ち勝たねばならない。
 話が横道に逸れたので元に戻る。OA化の波が設計事務所にも波及したとき、設計事務所に対する戦略商品として選ばれたのが、意匠屋の苦手とする、企画業務に於ける資金計画と日影、逆日影シュミレーションであった。地上げという言葉を初めて耳にしたのもこの頃であった。逆日影等というのはスパーコンピューターを駆使して初めて可能なことである。幾万通りの条件の中から一つだけ答えを出す様なものである。16ビット640KBの98、MS-DOSでは無理な世界なのである。結局デベロッパーに対する単なるプレゼンテーションでしかありえず、設計資料としてはなんの役にも立たないものである。○○商○のソフトなどは逆日影で出したデーターで日影図をかけば、全て日影時間を越えてしまう様な代物である。本来、設計条件・建築計画を考えに入れない逆日影等は考えられず。営業屋と化した建築設計屋の話の種にしか過ぎないことである。逆日影等は日照メジャーを用いカンピュータで当たりを付ければよいことである、その位出来なければ設計なんか辞めたほうがいいのである。
設計事務所や工務店に対するOA業界の次なる戦略商品はCADである。どの位のソフトハウスがあるかわからないがピンからキリまでひしめいている。その広告のセンスのなさと言ったらひどいものである。浪速の女社長が経営するソフトハウスの広告くらい酷い物はない。てめーの顔写真とCADにどう言う関係あるのか、本当に鏡を見たことがあるのかと言いたくなる。また2週間に一度必ず葉書でダイレクトメールを送ってくるソフトハウスがある。そこから勝手に送ってきたカタログの立派なこと内容の御粗末なこと価格の馬鹿高いこと、どうなっているのでしょうかね。「単線プランを入力するだけで、平面図から立面、矩計、外観パース、見積書まで自動作成!」等と書いてある。建築の設計等軽く見られたものである。はっきり言って馬鹿にされているんだよね、一般の認識等この程度のもの何だろうね。

この間も○○商○から電話があった、はっきりいって俺この会社嫌い何だよね。

「もしもし○○商○ですけれども、建築知識の記事をご覧になりましたでしょうか。」
「ああ、本屋で立ち読みしたよ」
「如何がでしょうか私どものCADは」
「興味ないね」
「優秀なCADであると紹介されていますので是非一度・・・」
「広告主の悪口を言う訳ないだろしタイアップ記事なんか信用できないよ。」
「そんなことありません」
「忙しいから切るよ」
「コンピューターは何か既にお使いですか。」
「おたくには関係ないでしょう」
「そんなこと言わないで教えてくれたっていいじゃないですか。」
「しつこいねあんたも」
「98ですか」
「いいや」
「それじゃ何ですか!」
「怒るなよ」
「教えてくださいよ」
「うるさい」ガシャ!

数年前の建築知識の記事にこう言う事が書いてあった。「出力はプロッターで手書きの1/3のスピードである。」どう解釈してよいのか理解に苦しむ。手書きで8時間かかる図面はプロッター2時間半も出力にかかるのかしらと思う。入力については一言も触れていなかった。広告主に好意的な記事しか載せないとなると、リクルートやアスキーと何ら変わらない、建築雑誌も舐められたものである。
98に代表されるMS-DOS系マシンの汎用パソコンCADを使いこなすにはそれ相当の技量を要求されます。メインプログラムだけでは難しく、オプションプログラムを加えないと実務的ではありません。MS-DOSを使いこなすには理論的に思考を積み重ねていくアルゴリズムの明確な垂直的思考のパラノ型の人間でなければ勤まらないと思います。水平的に物を考える建築家に向いているマシンとは思えません。計画から使えるようでなければデザイン思考の建築家にCADが普及することは困難でしょう。建築素人のオペレーターにCADを任せるなどは無責任な事です。誰でも考える実施設計にCADを使おうとするから、CADがあっても実際に使われないで埃を被った唯の箱に成り下がっているのです。まずはプランニングから初めることです。それには誰でも容易に使えるコンピュータでなければいけません。

Posted by S.Igarashi at October 1, 2003 04:52 PM
コメント